究極の目線外し?
よく男の背中は・・・なんてことを言うが、そんなの男だけの特権でもなんでもない。
しかし、女性についてはあまり背中について語っているのを聞いた事が無い。
ポートレートは顔が写っていなければいけないなんて定義があるわけでも無いのだが、後ろ向きと
なると、そのモデルがどれだけ気持ちが入っているかが、問題になるであろう。
「今から背中を撮るから後ろを向いて」なんて言っても、それで上手く行くとは思わないわけで、
結局は、いつでもシャッターを切れる状態でいることが、カメラマンが最低限やらなければいけな
いことだと思っている。
5年ほど前になるが、キヤノンかフジフィルム主催の撮影会で、あの立木義浩大先生が指導に来て
いたのだ。その時は、モデルの好みよりも立木カメラマンを観察してたと言ってもいいだろう。
日本のカメラマンでは一番カッコいいと思われる立木氏であるが、少しもカッコつけることもなく
気さくなおじさんである。
逆にモデルが舞い上がってしまう部分があるほどオーラが出ているが、そんな緊張感をほぐす雰囲
気作りもサスガに超一流であると思ったのを今でもはっきり覚えている。
それと、指導者という立場であったが、いつでもどこでもシャッターを切る姿勢は、是非真似した
いとその時感じたのである。
それは、私と話をしながら次の撮影地に向かって歩いている時であった。前を歩いていたモデルの
背後から、歩きながらパチパチと2,3カット撮ったのである。
同じグループのもう一人のモデルと楽しそうに話しながら歩いているモデルの一人に向けてカメラ
を構えてシャッターを切るまでは一瞬の出来事であったが、その時立木氏と交わした会話よりも、
そのことだけを鮮明に覚えているのだ。
私と話をしていても、シャッターチャンスはしっかり見ている姿勢を見せ付けられたわけだが、
そんな姿勢を私に教えようとしてくれたのだと、勝手に私は思っているのだ。
さて、今回のオマケ画像としての一枚は完全に向こうを向いちゃったまなちゃんであるが、一枚の
ポートレートとしてしっかり完成していると思うのである。
この広島西飛行場のフェンスの脇での撮影は、いい雰囲気で撮れたと感じているが、それは私との
息が合ってたのはもちろんだし、まなちゃん自身の中で描いているイメージの世界は途切れること
はないのだ。
私がフィルムやレンズを換えている時も、まなちゃんの中ではそれは流れ続けているのでる。
また、このカットは撮影中のインターバルでも何でもない。まなちゃんの演じる世界の中ではこう
いうのも自然な流れであって、そのワンシーンにすぎない。
だから、あっちを向いてしまったからって、ファインダーから目を離しては絶対にいけないのであ
る。
まなちゃんは、目線を外したポーズがすごく絵になるモデルだと、最初に撮った時に感じたのだが、
こういうのが究極の目線外しであると思うのだが、どうだろう。
目、鼻、口が写っていることが大前提ではないと私は思っていて、今回の向こうを向いた写真から
は表面上まなざしはまったく見えないが、それを感じさせることは出来るのではないだろうか?
ただ、今まで首から上をフレームアウトしたことが無い私だが、まなちゃんなら顎のラインとかだ
けでもそれが充分表現出来るような気もするのだ。
それは今まで数多く見せてくれた“感じる目線”の余韻を連想させてくれるのではないだろうか?
結局、彼女がただ単に、見てくれだけの表面的なポーズだけを見せているモデルではないというこ
とであるからこそ、可能なんだと思っている。