柔らかい表情フェチ


この表題、これは最近の私の撮影の中心になっている部分である。
過去にもこれは無意識ではあったが、私の撮影の主流を占めていたとも言える。
柔らかい表情と言っても、遠くからそっと撮る場合もあれば、寄って撮ることでカメラマンの存在を意識してもらった上で、自然な表情を捕まえる場合もある。

そして、今の私が価値を感じているのは、もちろん後者である。
遠くから望遠で、切り取る方法は撮影会ではよくやる方法であるが、多くのカメラマンがひしめく状態であれば、この方法で狙うのが一般的であろう。

しかし、まなちゃんとのマンツーマンで撮影している場合は、逆にそんなそっと遠くから見つめるってことは出来ない。当然まなちゃんは私の動きを常に注目してくれているし、私もまなちゃんのどんな細かい表情も見逃さないようにしている。

私の存在を近くで感じながら、それでいてモデルに穏やかな気分でいてもらうためには、安心感を持ってもらうことが一番大事であると思っているが、それは人間的な部分もあれば、技術的な部分も当然ある。
慣れたプロのモデルであれば、そこで作り笑いの一つや二つ簡単にくれるものである。しかし、それは所詮作り物であって、こっちに伝わるものはない。そうなると第三者にも伝わるものは表面的な部分だけになってしまう。
恋は盲目ってこともあろうが、お気に入りのモデルの表面上のものだけで有頂天になっていては、どうしようもない。

望遠レンズを仕舞って標準域のレンズに付け替え、モデルに一歩二歩と恐る恐る近づいて、じっくり構えて丁寧に撮ろうなんて考えていると、それと同じことをモデルにも考えさせてしまって、どんどんモデルも身構えてしまい、みるみる余計な力が入って行く。
無言で近づいたりすれば、それはさらに緊張感で満ち溢れたものになってしまう。
寄る時は、その結果の距離感も含めて、構図までをもあらかじめ計算しておく必要がある。

だから、いざ撮る時はそのタイミングと撮りだした時のリズムに集中するのである。リズムということであるから、当然ワンカットで終わらせるようなことはしない。
撮影会で、なかなか独占するチャンスがない場合などは尚更、このチャンスを有効に使いたいものだ。

声を掛けながら、一気にシャッターを切る感覚が必要だが、掛ける言葉は別になんだっていいのだ。ただし、相手に返事を求めるような会話的なものはX! 目の前のモデルだけに聞こえる声のトーンでリズムが刻めればそれで充分なのだ。
当然、そのシチュエーションから外れたようなことを言ってもシラケるだけ。また、大事なのは二人だけの間でだけ聞こえるような、声のトーンだと私は感じているのである。
その結果、いい表情が貰えたと思って満足してるようじゃ、まだまだ甘い。表情は貰うものじゃなくて、二人で作って行くものなのだ。

ただ、私が好きなシチュエーションである海や川では波やせせらぎの音で、この声のトーンがかき消されてしまうのだ。しかし、相手が自然の生み出す音なので雑音だとは感じずに二人の空気感を作って行けるのである。

先日のDee-Light!の撮影会で最後にフェスティバルゲートに行ったのであるが、ちょうどそこの中央の広場で、時間があったので撮影しようと思ったのである。
ちょうどフォクトレンダーに15mmレンズを付けて、Dee-Modelsの麻奈ちゃんに見せてあげていたりしていたのであるが、その超広角レンズが遊園地全体を写し出すことが出来、ちょうど夕方でイルミネーションと、自然光が入り混じったいい雰囲気であった。麻奈ちゃんも興味を持ってくれたのだが、結局ファインダーを見て遊んだだけで終わってしまって後に後悔したのだが、今考えると、なぜあそこで撮影する気分にならなかったのかが、はっきりと分かったのである。
それは、すぐ近くで上手くもないバンドの生演奏が大音響で始まったからなのだ。
15mmレンズとなれば、かなり麻奈ちゃんに近づいてコミュニケーションを撮りながら、二人の息を合わした撮影がしたいところだが、大声を張り上げなければ、会話が成立しないような状況では、そんなお互いのリズムが大事な撮影などする気が失せるし、そんなムードなんかあったもんじゃない。そしてすぐに静かな場所に移動したのは言うまでも無い。
今日のオマケ画像は、その直後にお茶しに入った店でのカットだが、C−2020ZOOMで撮ったものと、1Vのノンストロボで1/10という苦しい状況で撮ったものである。

さて、『次回の素顔のままで』第23弾は尾道に行こうと思っている。私は当然のことながら、まなちゃんも尾道のことは殆ど知らない未知の地であるが、二人でいい時間が過ごせればそれで充分だと私は思っている。

<−戻る