Body language


日本語も危なっかしいというのに、英語タイトル連発となった。とは言っても、大した英語でもないか。今回はそのボディー・ランゲージについて、考えてみようか。
ボディー・ランゲージとは、難しく言えば人間が内面的であったり感情的なメッセージを伝達するのに、自分のからだの一部分、または全体を使って行う、非反射的運動もしくは反射的運動をひっくるめて指しているものである。
反射的なものではこんなのがあって、自分にとって快適な刺激を受けたときには無意識のうちに瞳孔が拡大するらしい。
私を含めて男は、いい女の写真やヌードなんかを目にした時には、きっと瞳孔が広がっていることだろう。その瞳孔の開き具合を見定める能力を持っていれば面白いはずだ。麻雀なんかをやる人なら、絶好な牌を手に入れた時の敵はきっと瞳孔が開いているはずなのだから、有利に勝負を進めることができそうだ。
現実にCM作成の現場では、モニターたちに映像を見せながら瞳孔の様子を撮影し、どのシーンで無意識の快感を得ているかを調査したりするらしい。

普通、ボディー・ランゲージは言葉によるコミュニケーションと併用されて真価を発揮するものであるが、言葉のない時代には主流を占めていた筈だし、言葉にせずともボディー・ランゲージの巧い人は、心の内面を自然に伝える事ができるようだ。その点、動物たちの世界ではボディー・ランゲージが欠かせないものだろう。実際、我が家のMダックスのジュンは面白いほど私に対して全身を使って意思表示をしてくるが、ちゃんと決まった行動をシチュエーションに応じてやってみせるのだから面白い。

人間には空間意識というものがあるらしく、その空間を利用して様々なコミュニケーション方法をとっている。人間は誰しも自分だけの縄張りを持ちたいと思う意識があるが、他人との距離感を1密接距離、2個体距離、3社会距離、4公衆距離の4つに別けることができるのである。もちろん、当事者の親密度で変化はするものの、密接距離は50cmぐらいまで、個体距離が1.5mぐらいまでで、まぁ気に入った女性でも初対面なら、この辺りからはじめるべき距離感だ。社会距離は3.5mぐらいまでを指し、ビジネス距離ってところだろう。公衆距離は8mぐらいまでだが、道で向かい側から歩いて来る人の顔がはっきり認識できて見つめても良い距離かもしれない。しかしその間にこちらが右によけて相手が左によけるとかの、意思表示が出来たりするのかもしれない。そして社会距離にまで進入し合ってまでも相手の目を見続けたりすると、男同士ならヤバイ空気が漂いそうだし、相手が女性なら嫌悪感を持たれても文句は言えまい。
私の体験談だが、アメリカ人だと思われる男性と何故かお互いに公衆距離で歩み寄りながら目が合ってしまった。そのまま、なに気に目線が合ったままで社会距離まで来てしまったのである。その時、彼はすかさず目を少し細め、口角を軽く上げて微笑んだのである。それにつられて私も軽く笑みを浮かべてすれ違ったのだが、これにはさすがにボディー・ランゲージ先進国だと感じた。
で、私が注目したいのはもちろん親密距離であるが、満員の電車やエレベータの中で目の前の相手の顔をジロジロうかがうなんて普通では考えられない。例え何かの拍子に目が合っても、さっとそらすのが常識人なのである。その裏には、「貴方の縄張りを荒らすつもりは毛頭ないよ」というメッセージが込められている。

簡単に、4つのゾーンについて説明したが、大きな撮影会では公衆距離から望遠で狙っているカメラマンが多く、社会距離まで接近できれば御の字である。小規模撮影会になって、やっと個体距離にまで寄れるわけだ。そして個人撮影なら広角レンズで密接距離に踏み込め、少し手を伸ばせば触れられる距離だが、恋人同士にしか許されないこの距離での見つめ合いも、ファインダー越しでなら出来てしまうのである。モデルに触れながらの撮影だって、信頼関係があれば許される。そこまでいかずとも、そのゾーンを共有し合ったもの同士の空気感が生まれてくるのである。

私が表情の中で一番重要視しているのが目の表情、まなざしである。そのまなざしこそが、まさに今その人の心の内で起こっていることを物語っているのだ。そんな最も効果的で最高に甘美で魅惑的なまなざしを写真のメインに持ってくるのは当然である。ある哲学者は、流し目というかパッチリと見開かれた目ではなく、そのひそかなまなざしは、まぶたによって圧縮されて矢のように飛び出し、まるで眠っているように見えるが、甘くものうい雲のむこうで完全に目覚めている。そしてそんなまなざしの持ち主は宝を持つに等しいと言っている。
また、ある学者の実験ではまぶたの位置を23種類認めたらしい。しかし、凡人はその中の4種類程度しか分別し再現できなかった。それは開いた目からまぶたを閉じた目までの間に2種類しか目で語るボキャブラリーを使えなかったということだ。そして、意外なことに男性の方が優れた結果を出したらしい。さらに、中には35種類を使い分けた男性がいて、まさにボディー・ランゲージの天才と絶賛していた。

私が、まなちゃんに惚れ込んだのが、最初の撮影でこの流し目を見せつけられたからに他ならない。面と向かって、まなちゃんに「流し目をして」ってリクエストしても笑って誤魔化されそうだが、撮影がはじまってしまうと、物悲しいようで知的であり、鋭くも見え、また優し気でもある。そして、しっかりタメが効いて遅れてついてくるような視線の流し方は天性のものであろう。オマケ画像でたっぷり紹介しようと思って探してみたが、いっぱいありすぎて選び切れなかったので、『素顔のままで』の本編をご覧あれ。


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