クルマ選びとカメラ選び


私はへそ曲がりなのか、ありふれたものが嫌いである。言い換えれば一般的に良しとされるものが一番だとは思わないのである。クルマもそんな車種は好きになれないところがあって、過去にはかなりのマイナー車に乗っていたことがあった。例えばピアッツア・イルムシャーは気に入っていたし、スバルのSVXを探していたこともあった。写真だって、シフトレンズをポートレートのレギュラー・レンズとして使ったわけで、魚住プロが最近おなじレンズを多用しているが、10年前には仲間はほとんど居なかった。

ベストセラーのクルマはそれだけ優れているから売れているわけで、売れなかったクルマは世間から受け入れられなかったことになる。デザイン的な問題だけではなく性能や価格もあるだろうが、高いレクサスが売れるのだから、デザインが一般受けしなかったのであろう。ピアッツアもSVXもジウジアーロのデザインで、私は好きであった。しかし、平均的なものを好む日本人には気に入ってもらえなかったと言わざるを得ない。
同じジウジアーロのデザインでも、アリストは売れたクルマである。トヨタというブランド力に弱い日本人は受け入れてしまったのである。今のbBのようにオゲレツなデザインでも売ってしまうのは、トヨタのマインドコントロールでしかないだろう。アリストも二代目になってからはトヨタ内でのデザインになったが、初代に比べるとバランスがいまひとつであるが、売れてしまう。
ニッサンのセド/グロが奇をてらったポルシェデザインにしたら不人気車となり、歴史有るセドリック自体がこの世から消えてしまったのである。私はゴーン体制になってからのニッサン車のデザインは好きではないが、セドグロのデザインは気に入っていただけに残念ではある。しかし、裏を返せば平均的な右へ習え的ではない自分で良かったとも思えるのである。

1970年頃はトヨタとニッサンの熾烈なシェア争いはすごかったが、今ではトヨタの一人勝ちである。その点、ニコンとキヤノンが争っているのはカメラ業界としてもユーザーとしてもいいことなのである。そして、どちらのカメラもひと目でニコンだとか、キヤノンだと分かるのがいいじゃないか。
ただ、EOS−1系のなで肩スタイルを他のメーカーが出していたら、受け入れられたかは疑問である。

マツダも経営難でありながら、我が道を行くところが好きなメーカーで、ロータリーは是非残してもらいたいものである。私が最初に買ったクルマがRX−7で、給排気系とCDIで1万回転以上回ったものである。しかし、モーターのように回り続けるだけで面白みには欠けていた。やはりカムに乗ると例えられるレシプロエンジンの盛りあがり感は何ともいえない快感がある。最近のロータリーには乗ったことがないが、どんなフィーリングなのか興味のあるところ。
ホンダは人気のあるメーカーだが、何故か一度もホンダ車に乗ったことがない私である。それは、どこかでホンダファンになりなさいと言っているように感じてイヤなのだ。

色々と不祥事があったミツビシだが、時代に逆行した逆スラント・ノーズのデザインは嫌いではない。悪そうな顔つきは好きだし、デザイン的に遊びがあって個性的なことはいいことだ。最初に初代GTOでダッグテールを出したのはミツビシだったが、そのダッグテールにすぐ反応し、マスタングをそっくりパクったセリカのリフトバックはよく売れたのを覚えているが、そんなトヨタのセリカよりあのGTOが好きであった。
また、二代目のGTOなんか、エンジンとシャーシを作って後からボディーを載せたら載りきらなくて、ボンネットに穴を開けて逃げを作っているところなんか、愛嬌があって面白い。トヨタならこんなヘマは絶対にしないだろう。
とにかく、他社が出したクルマが人気と見るや、開発力にモノをいわせてすぐにそのマーケットに参入して叩き潰すのがトヨタの戦略で、他社はトヨタのためにマーケティングをしてあげているようなものである。しかし、弱小メーカーであるスバルのレガシーの地位だけはトヨタでも崩せていないのは面白い。
数多いトヨタの車種構成だが、私好みのクルマがすべて生産中止になってしまっているのは、なんとも可笑しな現象である。

アンチ巨人がいるように義弟のようにアンチトヨタ派も結構いて、彼は絶対にトヨタ車を買わないのである。最近なんかベンツを売って、インプレッサを買った変わり者であるが、私もベンツからその義弟に譲り受けたピアッツアに変えた過去がある。スーパーの駐車場で、自分のクルマを探さなければならないほどの没個性はイヤなので、オリジナルのままでは乗れない私だから、信号待ちでまったく同じ車種と並んで気恥ずかしい思いはしたことがない。
写真でも同じで、他人の写真を見て回って、真似しようとか参考にしようとは思わない。自分の感性なりアイデアをもっと磨こうとは思うが、同じような写真を撮りたいと思わないのは、果たしていいことなのだろうか。
そんな私が、デジタル一眼はキヤノンではなくニコンを選んだ。最初はオリンパスのE−3を候補に挙げていて、馴染みの深いEOSが候補にならなかったのはなぜだろう?


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