リスクが伴うから楽しい


クルマ、カメラ、釣りと金のかかることばかり好きでやってきた。釣りも防波堤でアジやイワシを釣る程度ならいいが、ルアーフィッシングにはまるといくらお金があっても足らないぐらい道具を揃えだすので始末が悪い。自作も含めて300個以上ルアーを持っているし、ロッドやリールも高価なものを何セットも欲しくなるのである。写真機材と同じでいくらでも欲しいものが出てくる趣味である。
私は、まったくギャンブルをやらないのでそれだけが救いのようなものである。
周りには沢山ゴルフが趣味の同僚がいるが、人に誘われたり仕事がらみで始めることが好きじゃない私なのである。何事も自発的に好きにならなければ上手くならないと思うのである。

クルマだって、私がタダで貸してもらっている土地を駐車場にしているが、若い頃はそこで改造専門ショップとしてのガレージを作れと言われたことがあったが、気が向いたときに趣味の範疇で他人のクルマをいじるのは楽しいが、商売でやるとなると話は別である。楽しくもなければ、命がかかっている部分もいじることになるので責任重大でもある。二十年以上の付き合いになるカーショップの店長も神経をすり減らしているそうである。ぱっと見は楽しそうな商売に見えるが、現実は甘くないのが分かっているから、暇な時に手伝うぐらいにしているわけだ。

少しのキズもつけないように扱わなければならない客もいるし、ちょっとした異音や音に過敏に反応してクレームを付けられることも少なくないわけだ。足回りをいじればボディーがきしむこともあるし、エンジンをいじれば高熱になり、最初は焦げ臭くなることも少なくない。ガソリン臭さや排気の匂いが車内にこもるようではどこかでミスを犯しているだろうが、当たり前のことが納得できない人種は多いものである。

世の中、どうでもいいことに異様に拘ったり神経質になる人が多いが、私は逆なのでその心理が理解できないわけだ。特にクルマやカメラにはその傾向がある人が多い。土足厳禁で禁煙に飲食禁止のクルマになんか頼まれても乗りたくないし、シートにビニールカバーを付けっぱなしの人もいて驚くばかりである。
ビニールと言えば、携帯の液晶に購入時の保護シートをセロテープで補修しながら、ずーっと大事に貼ったままの人なんかを見ると開いた口が塞がらない。その延長線上にカメラの液晶パネルの保護シートに異常な執着を見せる人と、レンズに保護フィルターをつけないと心配で撮影が出来ない人がいる。
モノを大事にすることはとてもいいことだけど、度を越すと逆に楽しめなくなるってものである。

ルアーだと、貴重で高価なものは大事にしたい気持ちもよーく分かるが、釣れそうもない障害物も木の枝も岩もないような所に上品にキャストしていては、ルアーを失くすことはないかもしれないが、本来の性能をまったく発揮させられないわけだ。私はこの逆をいって何度お気に入りのルアーを失ったことか、しかし大物を釣り上げたことも同じぐらいあるわけだから、それでいいとするのが本当の楽しみ方なのである。
しかし、一度も釣果をあげてない段階で貴重なルアーを失ってしまったことが何度もあるが、それを恐れていてはいけないのである。
クルマのエンジンがブローするのを恐れずに無闇にパワーを追求するのとは違う意味のリスクであることは誰もがわかるはずだ。

リスクと言えば、自動車メーカーはかなりの安全マージンを残した状態で販売している。普通にファミリーカーとして乗っているユーザーが、気まぐれでアクセル全開にした途端に壊れてしまっては、自動車メーカーとして大問題になる。しかし、そのマージンのギリギリの線を狙って、パワーを追求していく場合、最近はネット上で知り合った先輩オーナーのノウハウが得られるのはすごく助かるし、チューニングのプランも立てやすくなる。それに、そういう仲間は同じクルマを好きというだけで、年齢の差も関係なくすぐに仲良くなれるし、実際に集まっても時間を忘れさせてくれるのである。しかし、こういう仲間が集まると思わず影響されてしまって、当初の予定以上にいじってしまうことになるのは言うまでもない。しかし、経験談が聞けるのはあらゆる面でプラスとなる。
写真の世界では、撮影会などに参加したり、カメラマンが大勢集まる風景写真の名所にでは、多くの機材自慢が来ているから自分を見失わないようにしなければならない。

写真は思い切った冒険をすると仕上がりが気になって、現像があがってくるまで心配だった銀塩時代は過ぎ去って、デジタルになってからはその心配がほぼ無くなったわけだ。だから、その分失敗を恐れずにとことん追求できるようになり、さらにRAW現像ソフトの出来がいいので、かなり追い込んだ仕上げが出来るようになった。リスクが減った分失敗を避けられるが、誰もがかなりのレベルの写真を仕上げることが出来る時代になったと言える。
しかし、「してやったり!」とにんまりするような仕上がりは、リバーサル・フィルムの頃に比べると、激減してしまった。

写真は失敗しても趣味であれば諦めれば済むが、クルマのチューニングとなると、エンジンがブローしたり炎上や事故など、そのリスクは洒落にならない。そこの微妙なラインをつきながらモアパワーを追求していくことになる。
私がチューニングを始めた頃とは時代が大きく変化して、全てがコンピュータ制御されているのが最近のクルマである。しかし、ベースになる部分はほとんど変わらないので、過去に得た知識が応用できるのは写真の世界とまったく同じである。
ターボの加給圧を最近上げたわけだが、それまでは問題になっていなかった部分が耐えられなくなっていて、先日は山道で突然プシューと音がして肝を冷やしたが、加給された空気が通るパイプが抜けただけであった。これは、加給圧をあげた時はよくあることだが、セッティング中に異音がするとドキッとするものである。
しかし、すっぽ抜けたパイプはインタークーラーの手前の部分で、狭いエンジンルームなので手が入らないわけだ。結局山道の路肩でヘッドライトを外しての作業となった。常にクルマに工具を積んでいないと不安なのはいつも同じだ。
そんな感じで、以前クルマと一緒に盗まれていた工具もこの一年半でかなり揃ってきているが、まだまだ欲しい工具は尽きない。
その点、カメラやレンズは壊れたら自分ではどうすることも出来ない。特にデジタルになってからはダメだ。
こういう精密機器はあっさり、専門家に任せるのが上手い付き合い方ってものである。


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