コストダウンと品質管理、そして使い方


シグマから85mmF1.4が出た。まだ国内ではリリースされていないのでその性能はベールにつつまれている。しかし、50mmF1.4のシグマのレンズが一部で評判いいみたいなので期待が持てそうだ。しかし、デザインというか質感というか、相変わらずイマイチなんだよね、このメーカー。
デザインだけじゃなく、シグマの大口径単レンズは開放付近で被写界深度が浅いのにもかかわらず、AFの精度がいささか信用できない部分があって、そこが大きなネックになっている。速いだけじゃ何の意味も無いんですよ、シグマさん。

せっかく光学的にいい設計をしているのに、AFの担当部署がそれを台無しにしているのだろうか。大口径レンズはAFスピードより精度を優先しなければならないのが分からないはずもないのに、それをしなかったメーカーのチグハグさを感じずにはいられない。
逆に光学的にギリギリの設計をしていることで、収差の影響でAF精度を出すのが困難になって苦労した結果かもしれないが、1本ごとにチューニングしてから出荷するとどれぐらいのコストがかかるのだろう。しかし、生の声に耳を傾けると、それぐらいしないといけない状態に感じてしまうのである。近距離撮影では開放では前ピン、絞ると後ピンに変化するなんて情報も聞こえてくる。
絞り込めば最高の描写をするらしいが、それはまた別の話だ。

いくら、決まった時は最高の描写をしてくれても、歩留まりが低いレンズはポートレートでは使うことは出来ない。実際にシグマの30mmF1.4を使っているが、ちょっとその傾向にあるようだ。
ブツ撮りであれば気が済むまで撮り直せばいいが、一瞬の表情を切り取っていく私の撮影スタイルでは取り返しのつかないショットに落胆してしまうことになる。しっかり写っていなければ意味がないのだから、純正より表現力があったとしても悩ましいところである。当たりかハズレかどっちを引くかなんてギャンブルみたいな買い物になるのって、やっぱりおかしい。

肝心のニコンもそろそろ85mmF1.4がリニューアルって噂が後を立たないが、ナノクリ仕様になって思いっきり値上げしてくることは予想される。しかし、シグマが思い切った設計で単レンズを出してくるので、カメラメーカーもうかうかしてられないというところだが、発売直前に見直しにかかっているとかってことはないかな。

85mm大口径の単レンズが気になりだした私だが、そのベースにはD300からFXフォーマットに移行したい気分に徐々になってきているからにほかならない。そりゃ、銀塩でのポートレートの半分近いショットは85mmだったのだから。

DXフォーマットでは130mm近い望遠になることを考えると、VR仕様になってくるかもしれない。そうなると、シグマとの価格差がさらに広がってきそうなので、悩む人がもっと増えそうだ。しかし、これからはこのクラスのレンズを使う人の多くはFXフォーマットになりそうなので、そこまで望まなくていいのかもしれない。
キヤノン・ユーザーからすれば、F1.4の85mmが無いだけに、ニコン・ユーザーより気になるかもしれない。F1.2は私も買ったが、ほとんど使わずF1.8でフットワークを重視して撮っており、F1.4が欲しいと思っていた。

返す返すも、50mm、85mmの単レンズは、ポートレート御用達なレンズの代表格であり、開放付近でピントが来ないのはお話にならないわけである。ボケ味が自慢なら堂々と開放で撮れるスペックを備えてもらいたい。
レンズメーカーは、価格を下げるためにコストダウンの積み重ねを行っているのだろうが、信用を失っては元も子もない。
あのトヨタですら大変だと思えるから、レンズメーカーは「安かろ悪かろ」イメージが脱却しつつあるだけに頑張っていただきたい。

雑誌で実写レポートに使用される固体は、完璧に調整されているのだろうが、シグマの50mmF1.4の描写には高評価が目立っていて、開放からシャープで使えるレンズのような表現はよく目にする。しかし、AFがかなり甘いのでそこそこ絞り込んだ方がいいとは書かれていない。それは、純正メーカーでも同じだろう。
クルマの雑誌のテストに提供される広報車が軽くチューンされていると囁かれているのと同じことで仕方のないことかもしれない。
結局、雑誌などの評価をすべて鵜呑みにしちゃいけないってことだな。ただし、掲示板のクレーマー的な書き込みも、ほんの一部の人が騒いでいて目立っているということも、肝に銘じておかなければならない。

ハズレのレンズに当たってしまった場合、ある程度のベテランなら、それがスペックなのか不良品なのかが判断できる。しかし、このカメラブームで一眼レフ初心者となった人だと、一眼レフなんて期待したほどでもなくてガッカリ、なんてことになる。
私もアドバイスを依頼された時に、その相手から本気が感じられたら、大口径の単レンズを1本買ってみることを薦めているが、キットレンズだけで撮っていた時と、大差ないなーななんて思われてしまったら淋しいものがある。

レンズメーカーは、ユニークなレンズやコストパフォーマンスの高いレンズを揃えてくれて、純正にない魅力がある。
私が先日手に入れたタムロンの70−200F2.8は、AFの遅さと手ブレ補正が無いのを承知の上であった。結果はまさにその通りで不満を感じるべきではない。しかし写りに関しては信頼できるレンズであると思っている。
安いんだから仕方がないだろってわけには行かない部分があって、いくら安くても信用できないレンズは撮影で使おうと思わないから、カメラバッグの重しにしかならない。

タムロンの望遠ズームだが、手ブレ補正がついていないので、最近は三脚を使ってしっかり撮っているが、やっぱりまったく違うのである。手ブレ補正の恩恵で手持ちで撮るのとは次元が違うシャープさがあるように思える。邪魔くさいように思えてトータルで楽なのも改めて思い知ったわけだ。
梅にメジロがやってきたので、三脚に固定してシャッターチャンスを狙っていたが、こんなこと手持ちではやってられない。AFもしっかり合うし体力的にもかなり楽である。重い三脚を持ち歩く方がよっぽど楽であり、仕上がりにもしっかり現れてくる。
FXフォーマットが欲しいなんて言っていながら、メジロが現れたときは、D300で良かったって思ったわけなんだよね。


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