圧倒されまくったニューヨーク


一週間足らずのニューヨークの旅はあっという間に過ぎ去って行った。かなり疲れたが、すぐにでもまた行きたいと思ってしまうほど魅力に満ち溢れていた。
フライトが全便ANAだったので楽だったことも、その気持ちに拍車をかけているようだ。
入国審査もすんなりと通過し、いよいよニューヨークの地を踏んだ時には実感が無かったものの、JFK空港からマンハッタンへ向かうイエローキャブからの景色で気分は最高潮である。また、タイムズスクエアを通ったこともあり、思わず窓を開けてシャッターを切ってしまった。
写真はRAWで1,000枚超えとなったが、まだまだ今になって撮り逃しているシーンが多くて残念でもある。しかし、撮影のために行ったわけではないのだから、ヨシとしなければ。

ニューヨークで宿泊したアパートメントがタイムズスクエアに近かったこともあり、毎日通りかかったが、昼も夜も自然と心踊らされるパワーを持っている。

それと私が知らず知らずに気になってしまったのが、NY中に溢れるイエローキャブである。何故か好きなのである。
JFK空港からマンハッタンに向かった初日に乗ったイエローキャブは残念ながらでっかいフォード・クラウンビクトリアではなく、日本車のカムリであった。トランクに大型のスーツケースが2個乗らないから、助手席に一個積む状態で、なんでこんなちっこいクルマでやってんだ?って思っていたが、ドライバーのギルバートがなかなかイイやつで、帰りも迎えに来るって約束して別れた。その時は、本当に来るか半信半疑ではあったが、後に大助かりすることとなる。

メトロも一日券を二回買って乗りまくったし、イエローキャブも7、8回は乗っただろうか。その結果、ギルバートがいかにまともなドライバーかよーく分かった。
運転中にわけの分からない言葉でブツブツ言い続けているヤツがいたと思えば、渋滞しているブロードウェイをチンタラ走るヤツ。アクセルとブレーキを交互に踏みながら走るヤツには参った。ドライブの快適具合でチップの額を決めてやったが、なんだかんだ言っても、イエローキャブは楽しいのである。
南北がAve(アベニュー)で、東西がSt(ストリート)。Aveは東から西に1Ave〜11Ave。Stは南から北に1St〜150を超えて増えていく。基本はそれで大体の位置関係が分かるし、ドライバーにもそれを告げてあげるのが分かり易いようである。
また、後席の正面に大きなモニターがあり、そこにナビ画面が表示されるから、どの辺を走っているかもよく分かって楽しいのである。

メトロも多くの線があって、行きたい場所にどの線が連絡しているか、よく確認して乗らないとえらい目に遭う。NYの地下鉄は怖いと昔はよく聞いたものだが、まったくもって安全で便利である。まぁ、深夜に乗らなかったので決め付けることは出来ないが、決して怪しい雰囲気は感じなかった。
しかし、便利度でいえばイエローキャブが思いっきりぶっ飛ばしてくれるので、速さ的にはそれほど変わらないし、ピンポイントで乗り付けられるのが最高だ。それに日本のタクシーに比べるとかなり安い。

二日目は、ブルックリン・ブリッジを歩いて渡ったが、快晴で無風という最高の条件が揃った。私なんか、橋の欄干の上を手放しで歩いてしまったぐらいだ。
と言うか、NY滞在中は寒いなんて一度も思ったことがないのだから、この時期では奇跡的とも言える。事前の調査では、青森県と同じぐらいで11月は雨もそこそこ降るとのことだったので、かなりの衣類を用意して行ったが、まったく必要が無かったわけである。下手すりゃ雪降るんじゃないかって思ったが、こういうのが嬉しい誤算ってやつだな。

寒ければ、アバクロのダウンでも買おうと思っていたが、必要なし。それより、なんなんだ、NYのアバクロは!
混んでいるのはいいとしても、店内がBARのように暗く、店を歩けば店員に当たるってほどのスタッフの数。そして、その店員の多くがが仕事もせずに遊んでいる。
レジで並んでいると、スタッフ同士で喋っていて、話が終わるまで待てと抜かしやがる。完全に舐めきったスタッフばかりで頭に来て私は何も買うことは無かった。
普段は海外通販でアバクロ製品をよく買っている私だが、あの店には二度と行きたくない。確か金曜日だったが、休日だったらどれだけ混むのかと考えるとゾッとする。
それにあんな暗闇にタングステンのスポット照明だけでは、さっぱり本来の色が分からないではないか。嫁さんがお土産も含めて10着ほど買ったが、明るい部屋で見るとなかなかいいじゃん。私も何か買っておけばよかったと少し後悔であったが、あのNYアバクロだけはなめてる。
その代わり、買い易かったSOHOのアメリカン・イーグルでたくさん買ったからいいのである。

SOHOには結局2回買い物に出かけたが、日曜日は閉店時間が早いので注意が必要である。
今回は円高で何でも買い得感があった。二人の両手は持ちきれないほどの買い物袋であったが、そこは初乗り$3のイエローキャブがある。
SOHOの街並みは雰囲気があって撮影意欲が沸いてくるが、朝や夕方の斜光線で石畳を撮ってみたかったが、その機会に恵まれなかったのが残念である。

今回の旅を快適にしてくれた大きな要因のひとつがイエローキャブだが、もうひとつは治安の良さではなかっただろうか。
私たちの借りたアパートメントは10AveのミッドタウンでHell's Kitchen(ヘルズ・キッチン)と呼ばれているエリアで、その昔はかなりヤバイ地区であったらしい。スタローンが育った場所で、ニューヨークの無法地帯と呼ばれていたそうな。
地獄の台所という意味だが、私はこの地区が好きになってしまった。買い物と歩き疲れて寝てしまった嫁さんを部屋置いて、私は一人で深夜のHell's Kitchenをカメラを持ってブラブラと散歩するのが密かな楽しみになっていた。そして、ぶらっと24時間営業のコンビニのようなマーケットに入って水やコーヒーを買うのである。
店主が大柄な見慣れないアジア人が入ってきたと身構えたような気がしたが、私に言わせれば、深夜の大阪の浪速区や西成区の方がよっぽど怪しいヤツが多いぞ。

また、パトカーの数が非常に多くて安全なのは、ジュリアーニ元市長の功績が大きいと言える。
朝から深夜までマンハッタンを徘徊して、一度も言い争いにすら遭遇しなかったのだから、危ないNYという認識を改めなければならない。
それと、ニューヨーカーの親切なことにも驚いた。カメラを持って二人で歩いていると、シャッターを押してやろうか?と何度と無く声を掛けられたものである。
それに、道を尋ねると、こと細かく何ブロック先かまで教えてくれるし、一緒について来いと道案内されたこともあった。確実に日本人より心の余裕があることは確かなようだ。

そして、私たちの旅の終わりを待つように、帰国の日は朝から雨である。空港に早めに着きたかった私たちはギルバートと待ち合わせた8時ではなく、7:30に10th Aveの道端に多くの荷物を持って出た。そしていざイエローキャブを拾おうとしたが、雨の通勤時間だったからなのか、空車がまったく来ないのである。
何ということだろう。ギルバートとの約束の8時も近づいてきたので、もらった名刺に電話すると、こっちに向かっているが、あと5分だという。しかし5分待っても来ない・・・ マジでヤバくなってきた時に、道沿いの店の店主が、通りの向こう側の方が拾い易いというので、大量の荷物を持って広い道路を渡ったところで、遠くから見覚えのあるカムリがやって来て、ギルバート反対車線で私たちを探している。50mはあるだろうか。ここで、帰られたら一大事ということで、とっさに出たのが指笛である。ピューピュー♪ すぐに気づいたギルバートが4車線を斜めに突っ走って来た。雨で渋滞していたということだったが、ギルバートよくぞ来てくれたって、ほっとした。

自分で、ナンバーワン・ドライバーとのたまうギルバートであるが、混みあう道路を尻目に裏道を駆使しながら、無事にJFK空港に予定時刻に到着。
またこの地に来ることがあれば、ギルバートに一番に電話しようと思ったのであった。


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