技術と感性
技術については、写真の専門学校にでも行くか、達人にでも付きっ切りで習えばある程度は
身につくのでしょうが、感性とやらは磨くヒントは得ることがあっても習うという感覚では
ないでしょう。
私は父親が昔カメラマンの経験があったらしく、小学生の頃から一眼レフを触る機会があっ
たが、教えてもらったのは絞りは5.6にしてシャッター速度は・・・と、これだけだった記
憶がある。
後は自分なりにいじくって、ファインダーを覗いては空シャッターを切るという行動を繰り
返していたように思う。(フィルムを買うお金が無かった・・・)
かれこれ25年ほどたつことになる、その間にクルマに興味を持ったりと寄り道したのだが
またカメラに戻ってきたわけで、基本的にメカが好きで仕方がないのでそこから興味を持ち
はじめたものは長く続いているみたいですね。
「好きこそ物の上手なれ」という言葉の通りいじるのが好きなので、カメラの操作もすぐに
覚えてしまうのです。そのカメラを迷うこと無く操作できるというのは写真術では基本にな
るのではないかと思うのですが。
最近のAF、AEフル装備のカメラでは昔のマニュアル機とは操作の感覚が違うように思い
ますが、最終的カメラにセットする情報がデジタルかアナログかの違いであって、絞り値や
ピント位置が変わるわけではないのですから。
「アナログ感覚で使いやすい」を宣伝文句にしているカメラが最近多いが、それはただ単に
昔ながらのカメラを使いなれている人の発想であり、今のデジタル社会で育った若者には通
用しないのではないでしょうか? 逆に細かいセッティングの出来ないアナログよりずっと
優れていると思うのですが、完全マニュアル時代からカメラを使っている者の意見であり、
公平に見てそう思うのです。
結局何が言いたいかですが、撮影中にふと浮かんだアイディアをすぐに実行しようと思って
もいちいちカメラの説明書を読んで、設定していればシャッターチャンスを失ってしまうか
も知れないし、最初からおっくうになってそのまま撮り続けてしまうのではないでしょうか?
多分後者の場合が多いのではないかと思うのです。私もEOS−1Nのカスタムファンクシ
ョンをすべて覚えているのではありませんが、ある時思い付いてその場で説明書のコピーを
見て設定したことがあります。そのようにして必要に迫られて操作したことは意外と覚えて
いるのです。
当然自分のカメラはどんなユーザー設定が可能かぐらいは覚えていて欲しいものです。
感性についてなんですが、これは技術のように誰が見ても優れているとはっきり分かるもの
では無く、撮影者それぞれが持っているイメージの世界ですから、他人がとやかく言うこと
ではないのですが、中には「こんな撮り方もあるのか・・・」と思わせる作品に出会うこと
も多いですね。
それはどこかの写真入門の本に書かれているわけではないし、その撮影者が被写体と直面し
た時に、ひらめいたことなんでしょうね。それはその人の感性であり、それに賛同する人も
逆の人もいることでしょう。
同じモデルを複数のカメラマンが撮ったとしても、まったく同じ写真は無いはずなのです。
でも、似たような写真はいっぱいあると思います。同じ焦点距離のレンズで同じフィルムを
使って、ポジションが近ければそうなるとは思うのですが。また、その人たちが同じカメラ
のプログラムオートを選択し、同じアルゴリズムの多分割測光を使っていたとすると、さら
にモデルの顔をファインダーの中央に合わせてピントあわせをしていたら・・・・
一度実験していたいものですね。
でも、そんな中で他の人たちと違うイメージの作品を仕上げてくる人もいるわけで、それも
二種類があります。「なんとなく撮ったらこんな風に撮れていた」というタイプと「イメー
ジ通りにあがった!」とほくそえむタイプがあるのではないでしょうか。前者は出会い頭の
交通事故のようなものでこんな写真をまた撮れといっても無理なのかもしれません。でも後
者の方はその写真を見てさらに応用までできてしまうのです。
どちらが良いかは言わずもがなですが、後者になりたければ自分のイメージが具体的に作れ
てそれを撮影機材の設定や組み合わせで実現ができなければなりません。
そこで「技術」と「感性」が合体して、その人は作品と呼べる写真の作者になれるのだと思
うのですが、いかがでしょう。
恐らく誰でも、写真集やグラビアを見て、自分もあんな写真を撮ってみたいと思ったことは
一度や二度ではないでしょう。「フォトコンテスト」という雑誌がよく売れるのもそんな人
が多いからだと思います。
写真の世界はプロと同じ機材を近所のカメラ屋さんで揃えられるのです。そんな世界はめっ
たにあるものじゃありません。でも何故差が出てしまうのか。それは自分のイメージを持っ
ており、それを絶対に失敗すること無く作品に仕上げる能力を持っているからだと思います。
写真はレンズの前にあるものを正直にフィルムに写し出します。絵画とは根本的にここが違
います。ですから、主役を生かすも殺すも撮影者が頑張らないと何が撮りたいの?ってこと
になるのです。
その辺を表現したければ撮影機材の持っている潜在能力を引き出してやらなければならない
のですが、すべてカメラ任せの姿勢では限界があります。いや、なければプロが困ります。
ひとつ例をあげると、写真にはボケという武器がありますので、そのボケのことを追求する
だけで、レンズのあらゆることや、絞りとシャッター速度の関係が見えてくるはずです。
それが自在に操れるようになると、あとはトントン拍子にステップアップができてしまうの
ではなでしょうか。
まずは自分の持っている機材の可能性を引き出すことから初めてみませんか?