ボディーの選択その2


ボディーの話を続けることにする。

カメラのボディーと言えば、レンズが脱着できて、フィルムが収まり1コマずつ送ることができ、
シャッターを正確に開閉させる機能が付いた密閉された箱なわけである。
それを、各社競って製造しているのであるが、実に似かよっているようであり、大きく異なっても
いるのだ。

シャッターボタンの位置こそ、どの機種も右側のショルダー部分の前部に付いているが、その他の
操作部分は各社、各機種さまざまであり、それらを見るだけでそのカメラがどんなユーザーを対象
にしているかが大体分かるのである。
一般に初心者の方でも使えるように設計されている機種は、撮影モードが何種類か用意されている
ケースが多く、風景モード、スポーツモード、ポートレートモード、夜景モード・・・ といった
感じで、それらのいずれかを選ぶことによって、絞りと、シャッター速度を自動的に決めてくれる
のであるが、これはベテランになっても便利に使える機能でもある。
しかし、初心者とベテランでは使い方のアプローチが全く異なるのである。それは自分が撮りたい
被写体に合わせて、義務的にモードを選んでいる初心者の方に対して、ここは絞り開放気味にして
バックをぼかしたいので、ポートレートモードにしよう・・・とか、各モードの特性を理解して、
それを逆利用しているベテランの方では、大きく違うのである。

言い換えれば初心者の方にEOS−1Nを持たせて、風景モードを再現してみろと言っても無理な
注文となる。
入門書などで勉強して、それぞれのモードの考え方とその背後で動いているプログラムの仕組みが
理解できればしめたものである。

だから、初心者がいきなりフラッグシップ機を買うことに付いての議論を雑誌の誌面で見かけるが
私は、反対なのである。EOS−1NやF5には撮影モードなど付いていないのである。すべての
設定は撮影者が自ら決定するようになっており、それが適切であった場合に初めて最高のパフォー
マンスを発揮するのである。
同じスタートラインについた初心者が、EOS kissとEOS−1Nを使って撮影したとしたら
EOS kissの便利さにEOS−1Nでは到底太刀打ちできないのではなかろうか?
しかし、写真の仕組みが分かってしまうと、EOS−1NやF5の素晴らしさが理解できるのだ。

また、そういったプロ御用達のモデルでもしっかり、プログラム・オートや多分割測光が装備され
ており、特にF5の3D−RGBマルチパターン測光は他の追随を許さないばかりか、ハイアマチ
ュアやプロが長年築き上げてきたノウハウをも脅かす性能をもっているらしい。
そこで、なぜ充分すぎるほどの経験則を持つプロが使う機種にこれだけの機能が搭載されているの
かと疑問に思う方もおられるかも知れない。それがどっこいプロは意外とそれらの便利機能を使っ
ているのである。プロの考えとしてはそれほど正確であれば使わない手は無いわけで、その分フレ
ーミングとシャッター・チャンスに全力を注げるのである。とにかくプロは失敗しないのが大前提
であって、マニュアルを駆使して楽しんでいるわけではないのだ。
仮に、この便利機能が過ちを犯したとしても、そこはちゃんとフォローする技量を持ちあわせてい
るのであるから全く問題ないわけである。
その点、ハイアマチュアの人たちの方がそのような機能を毛嫌いしているようである。そんな機能
に頼って撮影していることを恥じる傾向にあるのは確かなようだ。趣味で写真を楽しみ、自らのレ
ベルアップを至高の喜びとしているのであるから、それはそれで素晴らしい写真道である。

面白いことに、私の周りにはEOS−1Nユーザーが数え切れないほどいるのだが、それぞれがお
気に入りのレンズを付けたり、アクセサリーを工夫していたりするので、ちょっと借りてファイン
ダーを覗かせてもらったり、その逆もあるのだが、面白いことに同じカメラでありながら別のモデ
ルのように思うことが多いのである。それは14項目あるカスタムファンクションを各自いじって
いることが多いのである。打倒EOS−1Nで登場したF5に至っては25項目もの設定が可能と
なっている。私のようなメカ好きにとっては、その数が多いほどワクワクしてしまうのである。

私としては、F5はお世辞抜きに素晴らしいカメラだと思っている。愛用のEOS−1N RSも
F5の前ではかすんでしまうのは否定できない。しかし現時点ではEFレンズ群も含めてトータル
での性能ではひけをとっているとは思っていない。
もし、すべてのAFレンズが同一規格のマウントで互換性があったとしたら、おそらく今の私は白
いEFレンズをF5に付けていることだろう。
しかし、そのようなことは現実にはありえないし、近い将来F5を超えるEOSの旗艦が登場する
はずであるが、その日が待ち遠しいようで恐ろしい複雑な気分だ。
今お気に入りのペリクルミラーのRSが¥320,000であり、HSが¥265,000で差額
が¥55,000となる。片やF5が¥325,000でそれを超えるスペックを引っさげての登
場となると¥400,000!!という声を聞いてしまいそうな勢いである。
あぁ恐ろしい・・・・


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