パーツにこだわる
私はまずモデルを前にすると、ファインダーを覗いてシャッターを切るわけだが、望遠系のレンズ
で顔のアップを狙う。そして顔をじっくり見させて頂くのである。元々モデルになってもらう女性
は私の好みであるから、当然のことながら美しくないわけは無い。
私は視力が良い方ではない(両目で0.6程度)ド近眼ではないが細かいディテイルがはっきり見
えてはいない。撮影中はファインダーの隅々まで見渡せるように眼鏡はかけない。ファインダーの
視度調節の範囲内で充分カバーできるので問題ない。
それで望遠レンズで細かく見るのである。でも、いやらしいとは思わないで頂きたい。撮りながら
鼻の下を伸ばしたり、逆にアラを探しているのではない。肉眼で見たイメージとレンズを通して見
たのでは微妙に違うので、私は彼女をどの角度でどこを強調して狙えばいいのかを探すのである。
例えば、すごく横顔が美しいモデルの場合左右どちらが美しいかを、レンズ越しに確認するのだが、
あるモデルの場合、肉眼では見えなかったのだが、右のまぶたの目尻寄りにキズがあったりするの
を発見し、それでは左側中心に狙い、右側はアップ以外かソフトフォーカスで行こう。と方針を決
めるのである。
横顔といえば、私は鼻から上唇のラインを特に重視しているのである。基本的にはツンとした鼻と
ちょっとめくれあがった上唇へ流れるラインなのであるが、なかなかこれだ!というモデルには巡
り合えないが。
または、正面からが一番美しいモデルも多いし、そんなに完璧な美女はいないわけで、どこかにウ
イーク・ポイントはある。それでどの角度で狙えばそれをカバーできるかを常に考えながら撮って
いるのである。但し、それはあくまでも私の主観であり他の人は違うかもしれないが。
また,笑った顔がいいモデルもいれば、キリっとした睨みつけるような目線が魅力的なモデルもい
て、撮影テクニックやレンズを選ぶのと同じくらいポートレートでは、モデルのいい所を探すのが
大事な作業なのである。
あとは、何といっても手と脚である。手といっても指先はもちろんのこと、極端にいえば鎖骨から
腕にかけてがきゃしゃなのが好きなのだ。
しかし、肩幅があって井上晴美風のモデルであれば男性用のYシャツなんか着ると実に良かったり
する。
脚は真っ直ぐに伸びたふくらはぎから、細い足首は誰でもそうだと思うが、やっぱりいい。
と言っても、脚は写さずにすむが、手や夏場合は腕は絶対にフレーム内にあるので、気になる部分
である。特に、手で表情を作ろうと思っても太い指ではちょっと困るのだ。
言っておくが、私だけがそのような事を考えながら撮っているのではない。当然ながら、ポートレ
ートの基本は女性の美しさが最優先であり、この後に可愛らしさや、小悪魔的な部分を付け足し、
それをサポートするのがコスチュームやバックであるから、その美しさを表現するためにはそのモ
デルの持っている美しい部分をできる限り生かしてあげたいと思うのは当然である。そこには撮り
手の主観が大きく影響するが、それくらいはカメラマンの主張をさせて欲しいところである。