露出を極める
ポートレートの露出決定だが、私は多くの場合スポット測光を使う。入射光式の単体露出計も当然
使うがほとんどすべてのケースにおいてスポット測光で用が足りるのである。
その前に、カメラに内臓されている露出計は反射光式である。簡単に説明するとレンズを通して、
カメラに届く被写体の明るさであるが、被写体に当たっている光の量ではない。だから、同じだけ
の光が当たっていても白は明るく、黒は暗くカメラは判断するのである。その点、入射光式露出計
はそのような判断ミスはしないというか、できないのである。
これではどう見ても勝負は単体露出計の勝ちであるが、そうとも言えないのである。単体露出計を
使えば、そのままの露出をカメラにセットすればいいのではない。出た目の値を睨みそこに味付け
してカメラにセットする必要がある。その補正は表現方法、光線の角度、強さで変わってくる。そ
れはある程度一定の法則に乗っ取って決めるのだが、それにプラスαが加わる。それは経験と勉強
からのノウハウであり、写真家としての企業秘密ってやつだ。慣れてくれば、割とすんなり決まる
のであるが、無限に近い組み合わせを覚えるわけにはいかないので、カンになるのだが、そのカン
を働かせるためには、場数を踏むしかない。
また、コマーシャル・フォトのようにライティングを決め、モデル位置も決めてしまうような撮り
方の場合は単体露出計が有効であるが、動きのあるポートレートでは、刻一刻と光りの当たり具合
が変わる事も多く、その時々で露出を計っていたのでは、リズムが狂ってしまう。単体露出計を使
う時はマニュアルで絞りと、シャッター速度をセットするので、露出を調整するのにファインダー
から目を離すことになり、嫌な間があいてしまう。これは私としては最も避けたいことなのだ。
ファインダーを覗きながら、シャッター速度か絞りを変えることは可能だが、それでは単体露出計
を使っている意味があまりないように思えるのである。
その点スポット測光であれば、測光ポイントを少しずらすか、補正値をいじる事で流れを乱すこと
はないのだ。
そこで、私はカメラのスポット測光を使用するのである。単体露出計のスポット測光の精度よりは
落ちるが、今書いた理由によりカメラの露出計を使うのだ。但し、各メーカーの上位機種のスポッ
ト測光に限る。キレがまったく違うので、注意する必要がある。
私はほとんどすべの撮影はスポット測光を使用しており、一番信頼している測光方法である。
ポートレートの場合、バストアップの撮影が多いがその時は、シャドウ側のほほでスポット測光し
それに+補正をかけている。それでは、広角レンズを使ったりフルショットの場合でスポット測光
エリアより顔の面積が狭いと、バストアップのようにほっぺたでの測光は出来ない。顔の回りには
髪があったりバックがある訳だから、それらの明るさに引っ張られてしまうのである。それが反射
光式露出計の弱点である。
硬い話をすると、18%グレーの反射率が反射光式露出計の標準であるが、被写体にそれぞれ反射
率が書いてあるわけでもなく、どこで測光すればいいのか判断できない事になる。
そんな場合は、ファインダー内で18%反射率に近い所を探して、そこを測光すればいいのだ。
そして、そのモノの反射率を考慮し補正をかけるのだが、アップの時よりプラス補正は少な目が基
本となる。それはバックとのバランスを取り、明るいバックが飛んでしまって締まりのない写真に
なるのを避けるためである。
私は、ポートレートだけではなく風景写真も撮るが、その時にもスポット測光を行いそれを瞬時に
判断する力をつけた。今ではこのカメラ内臓のスポット測光で露出をはずすことは無いし、微妙な
コントロールもできるまでになった。だから、AEB(段階露出)をする事も皆無である。
それでは、私がスポット測光を勉強していた頃に読んだ本で、玄光社の「カラー露出マニュアル」
から、【被写体別の反射率の目安】をここに書く事にする。これはあくまでも目安であり、光の当
たり具合で大きく変化することを頭に置いて参考にして頂きたい。
《明るい》 《標準に近い》 《暗い》
銀 91〜96% 木の葉の緑 18〜26% 緑の葉 13%
標準白 90% コンクリート歩道 18〜25% 芝生 5〜17%
石膏 87% 日本人の顔 16〜20% やや濃いアイ色 6〜12%
白画用紙 75% 土 10〜25% 紫 6〜12%
白ペンキ 60〜80% 枯れ葉 10〜20% 黒 3%
濃いレモン色 65〜75% 明るい赤色 15〜21%
白タイル 50〜80% 澄んだ青空 15〜21%
レモンの皮 55%
金 47%
生地の杉板 45%
みかん色 35〜45%
白人の顔 36%
【被写体の反射率と露出補正の関係】
色 黒 グレー 白
反射率 3% 18% 93%
2.25% | 4.5% 9% | 36% 72% | 144%
<----+-----+----+------+-------+-------+-------+-----+------+------>
-3EV | -2EV -1EV | +1EV +2EV | +3EV
補正量 -2・2/3EV ±0 +2・1/3EV
今日は、ちょっとカタイ話しになってしまった…