口径食は是か非か


おっと、いきなり難解なテーマである。写真をちょっとかじっただけであれば、この口径食って写
真用語は知らないかもしれない。しかし、写真でこの口径食のいたずらを見た事はあるはずだが、
気にも留めていないはずだ。
だが、この口径食を語れば、つまらない講義が延々と続くのである。

とりあえず、この口径食ってやらの姿を見てもらう事にしよう。そこで今日のオマケ画像を開いて
もらいたい。今日は別ウインドウで開くようにしているので写真を見ながらってことにしよう。
お馴染みの沙紀ちゃんであるが、今日は主役の沙紀ちゃんではなく脇役のボケを見てもらいたいの
である。

右斜め上と下、そして左斜め下に点光源がボケとしてあるが、まん丸ではなく欠けているのがハッ
キリと分かるはずだ。この欠けが口径食であり、今日はこれについて掘り下げてみよう。

確かに、このボケは丸いに超した事はないが、私としてはそれほどこだわってはいないのである。
これを丸くする事は可能である。しかしこの大きさをキープすることはできない。小さな丸ボケと
なってしまうのである。小さなボケになるくらいなら欠けていても大きくボケて欲しいと私は思う
のである。これについては私の好みであって、エライ先生はどう言うか分からない。でも、そんな
こたぁ関係ないのである。私はこの方が好きなのだから仕方ないし、他人にとやかく言われたくな
い。元来この口径食は悪者扱いされているのであるが、それを鵜呑みにして鬼の首を取ったように
指摘されても困るのである。こっちは百も承知でやっているのであるから。

この口径食ってやつは、ボケが欠けるだけではなく、もうひとつの特徴を持っている。それは良く
耳にする周辺光量落ちである。この現象は周辺光量の低下として、レンズのテストで表現されてい
て口径食と表現することは少ない。写真にはこのように二通りの現象として現れるが原因は一つな
のである。
簡単に原理を説明すると、円柱形のレンズを通った光が四角いフィルムに像を結ぶのだが、茶筒の
ようなレンズを真っ直ぐに通り抜ける光以外に前玉の周辺から差し込んでくる光は当然斜めにレン
ズ内を横切ることになるが、当然出口まですんなり出られずに欠けてしまう光があるわけだ。
それらの光は四角いフィルムの四隅付近では、なおいっそう弱められてしまう。それで、写真の周
辺の点光源は欠けたボケとなり、周辺部分の光量が低下することになる。
言い換えれば、レンズの中心付近ではF2.8の明るさがあっても周辺ではF3.5とかF4にな
っているということだ。

解決策としては、絞りを絞ることになるのだが、私はあえてそれをしない。この沙紀ちゃんの写真
は開放で撮っているのである。使用したレンズはEF70−200F2.8L USMである。
大口径望遠ズームと一般に言われるものであるが、この20万近い価格と1.3kgを越える重さ
のレンズをわざわざ使うのは、この開放F値の明るさが欲しいからである。それを絞り込んで使う
気はしないのだ。
この写真はバックに人工の小川が流れているのであるが、岩とキラキラ光るせせらぎが光のボケと
なっている。

これを口径食を恐れて絞り込めば、バックが中途半端にボケきれずに見えてしまい、うるさい存在
となる。私は沙紀ちゃんの表情と可愛らしいポーズをメインと考えているので、汚くうるさいバッ
クに妨害されたくはなかったのである。当然のことながら、開放でバックを大きくボカしているか
ら沙紀ちゃんが浮き上がってくるのである。焦点距離は135mm付近であるがもっとテレ側であ
れば、もう少し絞れるかもしれないが、この焦点距離でバックと分離するには開放にするしかない
と判断したのである。

もう一つ周辺光量落ちにより周囲が暗く落ちてしまうが、ポートレートにおいては一概にマイナス
要素だとは思っていないのである。
主役の沙紀ちゃんの回りが暗く落ちてしまうことにより、右上のボケもちょうど良い明るさのボケ
になったのではなかろうか。さらに左上が黒バックになったのもその恩恵だと思っている。それに
よってすぐ下の光を受けて輝く岩のボケも引き立っている。結果として沙紀ちゃんを引き立てるこ
とになっている。


たまには、こうして一枚の写真を語る企画も面白いかな。


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