スポット測光を使いこなせ
スポット測光機能を装備していると、カタログ上で詠っているカメラが多い。しかし、そんなモノ
を鵜呑みにして、カメラを選んで欲しくないのである。特に私がお勧めするスポット測光を駆使し
て露出を操ってみたいと思われている方には、ちょっと待った!と言いたい。
Canonについていえば、スポット測光が使えるのはEOS−1NとEOS5だけであり、下位
機種のEOS55より下にランクされる機種は部分測光であり、スポット測光ではない。しかし、
このように明確に区別されているのは、すごく良心的であると思っている。
他のメーカーはフラッグ・シップから、下位機種まで一様にスポット測光と記載されている。だが、
メイン測光方式として使えるか?と言われると、疑問である。
事実、フラッグシップ機と言ってもそれに相当するのはCONTAX RTSV,Nikon
F5,
Canon EOS−1Nの3機種であると思うのである。この3台のスポット測光は他の機種と
比較すると、その切れ味が違う。スポット測光エリアの部分をしっかり計ってくれるのはこの3台
だということである。
スポット測光で微妙なコントロールができるようになる為には、正確な仕事をしてくれるスポット
測光のカメラを使うのが近道なのである。
測光エリアの外の明るさに影響されてしまうようなスポット測光のカメラでは、自分の思った通り
の仕上がりにならず、撮影後に迷いが出てしまうような気がする。そして、自分のスポット測光に
自信を失い、楽な多分割測光での撮影に戻ってしまうのは、余りにも惜しいのである。
せっかく自分の力で露出を決定する楽しみと、満足感を得られるチャンスを逃してしまうのである
から。
例えば、EOS−1Nのファインスポット測光は『ボディー測光』であり、スポット測光用の受光
素子を別に持っているのである。しかし、一般的にスポット測光といえば『ファインダー測光』で
あり、これは多分割測光の一部を使用しているようなものであり、精度は落ちる。落ちるといって
もEOS−1NやF5の測距点連動のスポット測光はファインダー測光にもかかわらず、精度は一
枚上である。
だからといって、私は高いボディーを買えと言っている訳ではない。また、これを読んで1−Nを
買っただの、F5を買ったとメールが来ると困ってしまうのである。
しかし、10万円前後の機種は欲しいと思っている。または、程度さえよければEOS−1かF4
の中古は狙い目だと思う。それで、フラッグシップ機の良さは充分味わえるのである。
ポートレートにはスポット測光が良いと書き続けているが、もちろん何から何までスポット測光で
押し通せという意味ではない。
ポートレートで一番多い構図はバストアップであるが、その時は充分にスポット測光エリア内で顔
を捕らえることが可能である。フルショットであってもズームレンズを使っていれば、テレ側にズ
ーミングして測光し、その後構図を整えれば問題ない。しかし、単焦点レンズであったり、ズーミ
ングしても測光エリアより、顔の占める部分が小さければ、そのままスポット測光をすることは不
可能である。そんな時は何歩かモデルに近づいて測光しAEロックをすれば良いのである。
しかし、大人数の撮影会の場合はそんなこともできないし、動きのいいモデルを遠くから狙う場合
などでスポット測光が難しい場合は、多分割測光の力を借りても良いと思っている。測光に苦労し
ている間にいい表情やポーズを逃していたのでは、何にもならないのである。
そんな場合の私の対処方法を少し書くと、モデルの顔とその時の衣装の露出差をあらかじめ頭に入
れておくのである。そして顔で測りにくい時は光の回り具合が近い所を衣装で探し、そこで測光し
て、頭に入れておいた露出差を露出補正の値から差し引いて再設定すればいいのだ。顔より衣装の
面積の方が断然広いのだから。
また、レフなどでモデルの顔に光りを補っていないケースは撮影場所で同じような光線状態を探し、
単体露出計で露出を測る。そして、あっさりとマニュアルで絞りとシャッター速度を決定してしま
うというのも手だ。
基本的に、モデルに近づいて露出も測れないような撮影自体が、おかしいのであって、それを理由
にスポット測光は使えないと決めるのは、ナンセンスである。