モデル撮影は難しい


7/5の日曜日は水着撮影会であった。群馬では40度を越える猛暑が伝えられており、大坂のど
真ん中にあるホテルの屋上のプールは裸足でプールサイドを歩けないほどであった。

私は、不覚にも水着を持っていかなかったのであるが、これは大失敗の巻であった。水の中に入っ
たモデルを一緒に水に入って、同じ目線で捕えておきたかった。プールサイドから狙うだけでは、
やはり限界がある。

私は、とりあえず名ばかりの講師という役目であったのだが、撮影開始が11時半であり、完全な
トップライトの一番難しい時間帯であった。私は強烈な直射日光を出来るだけ顔に当てないような
ポーズと位置を探し回る状態であった。

水際では、快晴の青空を反射した水の影響で、かなり顔に青く写り込んでしまう状態であり、私は
苦し紛れに、目を閉じて真上に顔を向けてもらうポーズを要求したりした。
最近トップライトが強い時に私が良くやる、パターンの一つである。影も出ず、下からの跳ね返り
も気にしなくて良いという結構便利なポーズでもある。

モデルは二人であったが、一人はまなちゃんと同じ事務所に所属するきおらちゃんともう一人は、
モデル初体験の大学生のじゅんこちゃんである。
A班、B班と二つに分け、二人のモデルが水着を換えてそれぞれの班で撮影するという、いつもの
SPGでの撮影スタイルである。
プロであるきおらちゃんは慣れたもので、カンも良く終始和やかな雰囲気で撮影が進んだ。
一方、じゅんこちゃんはモデルが初めてであり、いきなり水着撮影ということでかなり固くなって
いるのが良く分かった。

最近、プロのモデルを撮るか、親しい女友達を撮ることが多く、かなり楽をさせてもらっていたの
だ。特にまなちゃんみたいなモデルを撮っていると、ポーズの指示にサボり癖がついてしまいそう
である。

今回のじゅんこちゃんは、指示が無いと、どうしていいのかまったく分からず、水着姿で立ち尽し
てしまうのである。無理もないことだ、無防備な水着姿にされ、カメラを構えた男どもに囲まれた
ら、身がすくむ思いであろう。私としては、とにかくそんな「私、どうすればいいのぉ?」って時
間を出来るだけなくしてあげるのが先決であり、一番重要であると思ったのだ。
そこにいっしょに来ていたじゅんこちゃんの友達二人の存在に、じゅんこちゃんも、私も助けられ
た格好になった。

私は、個性的でシャープな顔立ちのじゅんこちゃんは、いつも明るくにこやかな、きおらちゃんと
は対照的に最初は静のイメージで進めていくことにした。
デッキ・チェアーに横になってもらい、レフで顔に光を起こし鋭い目を強調したり、濡れた髪を微
妙に整えながら、表情を作って行くのは私のパターンであるが、あまりいじりすぎないように心が
けたつもりだ。
いちど、仕上がった写真を見れば、自分の姿がどうであるかが分かり、自分なりのバリエーション
をつけることも可能かもしれないが、初体験のじゅんこちゃんは、何がなんだか分からない状態で
あったことだろう。

最終ラウンドにはいると、じゅんこちゃんも徐々に雰囲気に慣れてきたようで、表情に余裕が出て
引きつっていた顔も柔らかくなってきた。
その頃には2時間の撮影も終わりを迎えることになったが、水着撮影であり、AB班合わせて10
人を越えるカメラマンを相手にして、よく頑張ってくれたと思う。
しかし、最後には次が楽しみだという期待感を持たせてくれてのフィニッシュとなった。

私も、個人撮影でマンツーマンの撮影であれば、それほど苦労はしないのであるが、初めての方も
含めて、複数の人がそれなりに撮れるようにセッティングするのは難しいものだと感じた。

大きな撮影会で、指導して下さる有名カメラマンの先生の中には、手抜きの人が多いのであるが、
ある程度多くの撮影者が撮れる場所さえ確保してしまえば、一流のプロ・モデルに任せっきりで、
ベテラン・ハイアマチュアが適当にポーズをつけるので、ほったらかしでタバコをくゆらしている
ケースをよく見かける。
そんな先生の代表は、あのサンダーである。私はそんな暇そうなサンダーと話をしてる方がよっぽ
ど楽しい。口うるさいおっさんの付けた、しょーもないポーズのおこぼれをもらうのはまっぴらで
ある。

私が大きな撮影会に行く場合は、熱心な先生の撮影ポイントの決め方を盗んだり、一流モデルの完
成されたポージングを参考にしに行くケースが多い。上手いモデルは正に職人芸のような身のこな
しを見せてくれる。いいと思ったポーズはとりあえず表情も何も関係なく、頂いて帰ることがある。
また、有名なカメラマンの言動はすごく参考になるのである。一日先生の背後に同じ焦点距離のレ
ンズを付けて張り付いてみるのも面白いかと思う。
大山謙一郎先生についていた時である。その時の外国人モデルが気に入ったのか、いきなり「オレ
も撮ってみようか!」と言い出したのである。レンズは氏のお気に入り EF100-300mmF5.6Lのズーム
であった。すると「ヘイ!カモーンッ ジェニファー!!」(実はモデルの名前は忘れた・・・)と
大声で叫んだのである。その時のことは今でもはっきりと覚えているが、モデルの顔がパッと輝き、
今まで見たこともないような嬉しそうな表情でに氏に向かって来るのである。その間10数秒であ
ろうか私の横で氏はズーム・リングを前後させながらシャッターを押し続け、スポンサーから提供
された24枚撮りフィルム一本をあっと言う間に撮り終えたのである。
いくら、有名カメラマンとモデルが知っていても、一瞬の一言でその場の空気を変えてしまう凄さ
には恐れ入った。

モデル撮影は、写真やカメラに関する知識や技術より、もっと大事な何かがあるようだ。

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