経験こそが最高の師範


最近のカメラは性能が良くなったもので、初めてカメラを手にした人でも、ほぼ間違い無く失敗は
無くなったと言えるだろう。
それは、私がプロであった父親からもらったカメラで写真を撮り始めた時では考えられないことで
あった。当時では露出が当たった写真が撮れただけで満足したものだった。
私が父親から教えてもらったことと言えば、絞りをF5.6にセットして撮れということだけだっ
た。シャッター速度など細かく聞いた記憶は無い。今になって思えば、シャッター速度との関係は
を試行錯誤で覚えていったのだが、それで良かったと思っている。
露出計のついていないカメラで感覚で覚えていったのであるが、当時小学生の私としてはモノクロ
であってもフィルム代や現像代は辛いものがあったが、それだけにワンカットを大事にできたので
ある。

今は、カメラとフィルムの飛躍的な進歩で、ハード側が失敗を防いでくれている。カメラの進歩に
ついては後述するが、フィルムでは、ネガカラーを使った「写ルンです」に代表されるレンズ付き
フィルムが、絞りもシャッター速度も固定のままで充分見れるプリントが作れることからもわかる
はずである。

カメラについて言えば、オートフォーカスが脚光を浴びているように見えるが、それは撮影時に目
に見えて効果が体験できるからかもしれないが、AEの登場の方が画期的であると思うのである。
それに最近は多分割測光でカメラにお任せすれば、ほぼ間違い無く納得できる露出が得られるよう
になってしまった。

だが、何故あれだけ多くの技術解説書が出版されているのだろう・・・?
それは、もっと奥の深い世界が存在するからであるが、大多数の人には未知の世界であって、さら
に知る必用もないのである。しかし、一歩踏み込んでしまえば戻りたくても戻れない自分がいるこ
とに気づくであろう。
ただし、いくら机上で勉強しても、自分の愛機で経験をつまなければ結局は自信を持てる状態には
なれない。経験という言葉は初心者の方は嫌うかもしれないが、それに変わるものは更なるカメラ
の新化でしかないが、それで良しとしてカメラメーカーの技術者の味付けの押し付けで満足か?と
いうことである。

私の場合、基本的にはメーカーが勝手に作り上げたブラックボックス的な評価測光は使用しない。
使うケースは広角系レンズでスナップ的にモデルを追いかけて撮る場合にマニュアルと併用する場
合がある程度であるが、ポートレートの場合は必ず補正はしている。その補正の根拠は“カン”な
のだが、そのカンは経験がなければ浮かんでこないものだ。評価測光を使うのはそれぐらいで、風
景写真の場合でもスポット測光を使っている。

評価測光では、カンで補正値を決めていると書いたが、ブラックボックス化されたEOS−1Nの
評価測光のアルゴリズムを理解しているわけではないが、なんとなく経験上の補正値でそこそこい
けてるわけだ。
メインで使用しているスポット測光に関しては、根拠があっての補正でポートレートから、風景ま
でカバー出来るようにいつの間にかなっていたのである。
その根拠は全て3万カットを超えるスポット測光での撮影でのノウハウであり、簡単にここで説明
しがたい部分でもある。と言うか、文章で理解しにくい頭の中のイメージであって、目で見た被写
体によって測光エリアの見極めと補正値の決定がはじき出されるのである。
それは、全て経験であって、解説書や他人からの情報を総合的に解析したからと言って、すぐに結
果が残せるわけではない。なぜかと言えば、解説書の著者や先輩カメラマンとは光りの感じ方の基
準が同じではないし、決して同じにはなれないからである。それは個人差の問題でるから、実際に
自分で経験して試してみるしかないのである。「露出名人一日にして成らず」ってことだ。

現在ネガフィルムを使用しており、露出について不満の無い方も多いことだろう。しかし、露出に
関してもっと深く突き詰めていくと、リバーサルフィルムを使うことになる。ネガを使ってても上
達は難しい。極端な話し、私はネガは文字どおりネガティブな考えがあって、守りに入っているよ
うに感じるのだ、ポジで攻撃的に失敗を恐れず撮ってもらいたいのだ。ただし、ネガの良さを認め
て敢えてネガを使うのは、ポジティブなネガの使い方であろう。
リバーサルを勧める理由は過去のLogを見てもらうとして、主題を浮き立たせる露出コントロー
ルはリバーサルの方が表現力が高いのである。但し、いい加減なカメラ任せの露出決定では、そこ
までは出来ないのである。カメラは意思を持っていないからで、それを吹き込むのは撮り手の感性
なのだ。

基本的にはポートレートはプラス補正で明るめに撮る。その方が絶対に女性は美しくやさしげに見
える。それを逆に暗く撮ったのが、まなちゃんがモデルのブラック系パターンである。
あのブラック系であるが、あれだけ褐色の肌に見えるほど暗く写ってはいるが、実はプラス補正を
しているのである!以外に思った方も多いことだろうがこれは事実で、単純にマイナス補正なんか
していたら、全滅していて、まなちゃんに怒られていたところである。

とはいいながら、補正云々をいくら書いても、その測光場所とその場所の明るさの具合でまったく
変わってくるのであるから、測光方式や測光部分の説明の無い解説書など、屁の足しにもならんの
だ。
話は戻って、ブラック系のまなちゃんは彼女の部屋でシンプルなライティングのみで撮っていて、
ブルーライトとタングステンの電気スタンドを使ったが,どちらもディフューズせずに使ったので
かなりのテカリが出ていたのである。だからそのハイライトを拾ってしまうので顔でスポット測光
してもかなりのアンダーとなる。だから1EV以上のプラス補正をかけているのだが、結果はあの
通りブラックまなちゃんなのである。あの撮影では単体露出計でチェックをして最終的にあの補正
値を決定したのであるが、ころころ変わるシチュエーションに応じて単体露出計の基本値から直感
で計算した補正値とスポット測光場所を決めているのだ。結果はごらんの通り成功で、まなちゃん
に誉めてもらったのだ!

もう一つ面白い話として、暗いバックに明るめに補正したモデルを入れれば、ぱっと見た感じは浮
き上がって見えるし、これが常套手段なのであるが、周りりに比べて顔を暗めに撮るのも場合によ
っては面白い効果が期待できる。それはそこを良く見ようと目を凝らす習性が人間にはあるらしく、
結果としては、視線を誘導することができるということである。そこにまなちゃんの力のある眼差
しがあれば、効果万点ってことだ。
そんなことを考えると、自分で露出を決めることが楽しくなるし、露出は感性であることがわかる。
そんな感性を導き出してくれたまなちゃんの存在は私にとって大きいのだ。

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