風景からポートレートへ


昨日は、風景写真についてほんの少し触れたが、私はこのJoe's Galleryでポートレー
トを展示しているので、女の子の写真が専門だと思われていた人がほとんどであろう。
それどころか、私の撮るポートレートは風景写真で覚えた露出の知識などが、ベースになっている
し、被写体を見る目も、基本的には変わらないのである。それについては昨日その一部を書いた。
同じ人間であるので、そんなに変わるものじゃないわけで、解説書に書かれている通りに真似した
わけでもなく、すべてが『オレ流』ってことになる。

元々、スポット測光で風景を撮っていたので、露出の決め方にはある程度の自信を持って、ポート
レート初体験に挑んだが、たいした露出のミスもなく撮れてしまったのだ。だからポートレートは
難しいなんてことは思いもしなかった。
今考えれば、馬鹿な時代もあったものである。Galleryの中のYukoちゃんの写真には、
その頃撮ったものもある。黒っぽい服を着ているものはそうだが、その後何度か撮った後のピンク
のセーターを着たものなどは、かなり違った印象に撮れているのがよく分かる。

ポーズをとった奇麗な女性を撮ることが、ポートレートであると勘違いしていたようで、風景写真
を撮るのに近い感覚で切り取っていた。
その後、モデルとのコミュニケーションによって、息使いを感じれる写真が撮れることを知り、ま
たその難しさを知ったのは、Miwaにモデルをお願いして、個人撮影を開始したときである。
撮影会で、撮影会慣れしたプロのモデルをただ美しく可愛く撮ることほど簡単なものはないのだ。

風景写真で鍛えたテクニックは、ポートレートを撮る上で非常に役立ったわけだが、それは単に露
出のミスが少ないという最低限のものでしかなかったわけだ。風景写真同様、足を使っていい表情
を追いかけてはみるものの、それは女性の皮をかぶったオブジェを撮っているに過ぎなかった。

気心の知れたMiwaをモデルにして撮ってみて、何か違うと感じるのに時間は必要ではなかった。
ちなみにMiwaとは、この撮影雑記第2話の一発目に出ている。

撮られることが仕事で、カメラの前にいるモデルを撮るのとは、まったく違うと言っていい。何で
も話せるような関係であるMiwaでさえ、上手く呼吸が合わない・・・
モデルに撮らされるという意味が分かったのもその頃である。

結局、撮影会で撮った写真では露出やピントが合っているのは当たり前。モデルに撮らされるので
はなく、盗むという感覚に近いかもしれない。そう言えば、シューターと言われたこともあった。
そして、モデルの女の子と親しくなれてはじめて、まともな写真が撮れ出すのである。

モデルにポーズをつけれるようになりだすと、勘違いしだす人が多い。自分の撮りたい写真のため
か何か知らないが、モデルに無理なポーズを要求して満足する人。エスカレートしてくると、モデ
ルの気持ちなんか考えない大馬鹿もいるわけだ。私はモデルが楽にこなせるポーズだけに終始しろ
と言っているのではない。モデルに嫌われるなと言いたいのだ。
モデルから見て、恐いカメラマンと、嫌いなカメラマンはまったく違うってことを分かっちゃいな
いやつが多い。私は優しすぎてしまう部分があるのは、よーく分かっているが・・・ 嫌われるよ
りずーっとマシ。それに言われなくても、モデルのほうから進んで辛いポーズをしてくれたりする
から、優しすぎるのも、まぁいっか。

なんか、話がずれてないかい?
えーっと、話をたぐり寄せるが、そうそう、風景を撮っていた私が表面的に美しいポートレートを
撮ることは、さして問題なくクリアーできたのだが、次のステップの感じるポートレートを撮るの
はそう簡単ではなかった。ポーズの合間に見せるふとした表情を捕まえることをやりだしたが、こ
れがまず、風景写真とまったく違う部分であった。次にモデル一人に複数カメラマンがいる場合に
二人っきりの空気間を出したいと思ったのだが、これは目線をもらったからって出来るわけじゃな
い。これだけは絶対に言い切ってしまおう。だ・か・ら、撮影会で「目線くださーい」って叫ぶな!
これやって満足してるようでは、進歩はないって思っているが、どうだろう? どうしても目線が
欲しいのなら、そこを例えば「まなちゃん、ちょっとこっち向いて!」って言うのとは、違ってく
るんじゃないだろうか。ほんのちょっとしたことなんだけどね・・・

目線だって、ただレンズを見つめてりゃいいってもんじゃないし、目線外しててもいい空気感はい
くらだって表現できる。しかし、モデルの意識がよそ向いてたらダメかな。

そんな雰囲気になれることが、確かにあるんだよね、他の多くのカメラマンをよそに独占してしま
えた時って、いいのが撮れてたような気がする。ただし、声掛けまくって引き付けたことは一度だ
ってない。

今は、撮影会には余り顔を出さなくなってしまい、個人撮影が多いが、二人っきりで撮っているか
らといって、いい写真が撮れるものではないと分かっているのである。
風景写真で、枝振りが良く満開の桜の木を独占できた時とは、ぜんぜん違うのだ。なんたって相手
は生身の人間なんだからね。

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