『素顔のままで』第16弾その2


今日は、今回の撮影をもう少し掘り下げてみようかな。
先ず、早朝に「霧の海」を見に行った時の写真だが、まなちゃんは紺のジャケットを着ている。
コンディションが良くてご来光が見れたら、レフとストロボのミックス光で撮ろうと思っていたの
だが、あいにく曇り空であったので、ストロボでの撮影となった。ストロボに関しては、当然なが
らスローシンクロである。薄暗い朝方であるが眼下の霧の海の雰囲気も少しは出したかったので、
ブレは覚悟で撮影している。
この時、ストロボの光量決定はEOS−3独自の機能であるFEロックを使っているが、当然なが
ら、ストロボ光も定常光も補正をかけている。その組み合わせは、カンで決めているがほぼイメー
ジ通りに仕上がった。

続いて、木の茂った細い森の道での撮影であるが、この道の脇を前回の15弾の撮影の時も通って
いたが、見過ごしているのだ。あの日は快晴であり、まったく違ったイメージであったと思われる。
小雨が降っていたにもかかわらず、雨に濡れないほどで、うっそうとしていて薄暗い道であるが、
まず、私の中で浮かんだイメージはこうである。

「迷い込んだ、森の小道で一人の女性に出会った・・・ そして誘われるままに、フラフラと・・・
 いつの間にか、森の奥深くへ来てしまった・・・」

まぁ、こんな感じでイメージを創り上げるのはいつもの事なのだが、このイメージを再現する為に
手持ちの機材をどう使って、そのイメージを再現するかが問題なのだ。出来もしないことを思い描
いても、それは単なる空想でしかない。

まず、どんなに暗くてもストロボは使いたくなかった。さらに、シャッター速度をある程度落とし
て、適度なブレが出ること。暗いからといって、大口径レンズを使うとバックがボケ過ぎて雰囲気
が出せないので、F4〜5.6ぐらいで広角域を使いたいところだが、それには高感度フィルムが
必要となる。それで、PROVIAの400を使って、カラーバランスが崩れる効果も加味してみ
た。また、露出はこの森の道の暗さを活かすようにマニュアルで設定し、シャッターチャンスだけ
に集中した。

これに組み合わせるレンズは、EF28−135mmのISレンズで、このF値の暗さも先ほどの
理由で了解の上である。それより、このレンズのIS機能はエエでぇ。
私がまなちゃんに指示したのは、「どんどん前に進んで!」と言っただけであるが、彼女にはこれ
以上の説明は不要である。

まなちゃんの動きに合わせて、私もそれを追いかけるのだが、まなちゃんはコートがひるがしなが
ら進む。それがブレることで動きが出るのだが、遅めのシャッターを切りながらそのブレ具合を私
は確実に感じていた。しかし、レンズがブレていてはどうしようもないが、そこをこの防振レンズ
はしっかりとサポートしてくれた。それに、AIサーボAFとの連携もよくタムロンのレンズでは、
苦しい状況だった。

まなちゃんは、私との距離を保ちながら上手く動いてくれる。スピードを上げようと私が距離を詰
めると、まなちゃんはそれを察したかのように、動きを速める。阿吽の呼吸とでも言うのか、いつ
の間にかこんなことができるようになっていたのだ。

この時の撮影では、まなちゃんをヒーターの効いたクルマの中で待たせて、機材を準備したのだが、
その間、撮影のイメージを固め、使うフィルムとレンズの決定をしているが、5種類のポジフィル
ムと10本のレンズの中からどの組み合わせを選ぶか、もたもた悩んでいてはいけないのだ。
私はべつに体力にものをいわせて、でかいバックにレンズを10本も常備しているわけではない。
それぞれの、使い道はしっかりと把握している。もちろん一度も使わないレンズだってあるさ、し
かし、私は撮影前にイメージした撮影プランを実際の撮影で無理やり当てはめようとは思わない。

屋外でのロケを基本としている『素顔のままで』では、まなちゃんを連れてクルマで移動中に、私
の目に止まった風景と組み合わせて撮り出すことも多い。
そんな時、どんなイメージが私の中に浮かぶかは自分でも予想できない。またそれがどんなに素晴
らしいイメージでも、それを写真として再現できなければ何の意味も持たないのだ。
だから、持ち出さなかったレンズをそこで惜しんでも後の祭りってことで、私はそれが嫌なだけで
ある。
また、私の脳裏に浮かぶイメージというのは、その風景の前にまなちゃんを立たせて、組み合わせ
るようなものではない。まなちゃんと如何に絡ませ、融合させるかなのである。
それらの作業はすべて、無意識の中の意識ってやつか。

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