『素顔のままで』第10弾を撮り終わって


『素顔のままで』のスタートが決まったころ、まなちゃんのプライベートなスナップを見て、私に
は見せてくれなかった表情をがたくさん見せつけられ、多少ショックを受けていたのだ。
それは去年の8/21付けの撮影雑記でも書いている。
そのことが、頭にあったので『素顔のままで』とタイトルもつけた。

マンツーマンの個人撮影となれば、撮影会はもちろんのこと、モデル事務所からモデルを派遣して
もらっての撮影では出来ない事をしなければ意味が無いと思っっていた。
しかし、そのテーマは、技術や機材、ロケーションやライティングにお金をかけて得られるもので
はなかったし、一朝一夕で結果が出るほど単純なものでもなかった。

とにかく、じっくりモデルのまなちゃんと向き合っていかなければならないことだけは、分かって
いたが、それ以外に方法など何も見つけてはいなかった。
ただひとつ、彼女にこれ以上続けても仕方が無いと、見放されてしまってはいけないと言うことだ
けは分かっていた。

そのためには、撮った写真を気に入ってもらえなければいけないと言うことだ。これが出来ていな
ければ、個人撮影を続けることは到底出来ない。
それがサラリとこなせるほどのテクニックを持ちあわせていない私としては、熱意を伝えるしか策
はなかった。行き当たりばったりの撮影だけは避けなければいけないし、まなちゃんにも撮られる
だけのモデルではなく、一緒に二人で作っていく意識を持ってもらいたいと思っていた。

それまで、2度ほど撮影したことがあり、その時の写真を見せたりメールでやり取りがあった程度
の私に対して、プライベートでの撮影の話しを持ちかけてくれたことは、突然ではあったが、彼女
から誘いがなくても、いずれ私から切り出していたことであろう。そのためにはもっと信頼される
必要があると考えていた矢先のことであった。

で、『素顔のままで』がスタートするが、期待通りまなちゃんは、いいモデルっぷりを見せてくれ
た。それ以上に、撮影に関してとても協力的で、一緒に作って行こうというまなちゃんの姿勢が嬉
しかったのである。
あちこち、遠くにロケに行ったが、朝早く迎えに行ってもしっかり早起きして待っててくれるし、
その前夜はメイクやヘアーを遅くまで考えてくれたりしていた。そんな姿を何度も見るにつけ、私
は撮影のメインを『素顔のままで』に完全にシフトすることにしたのだ。

途中、まなちゃんの受験があったりしたが、それも乗り越えてくれた。広島を離れて、大阪で一人
頑張っている彼女の息抜きのお手伝いも多少は出来たかもしれない。
撮影を楽しみにしてくれることは私としては何より嬉しいことで、ロケ地へ向かうクルマの中や撮
影後の食事では少しでも話し相手になれればいいと思った。
単に撮影時にモデルとカメラマンとしての事務的な付き合いではなく、自然にいろんな話しが出来
るようになったが、それが撮影のために役立つからという意識はまったくなかったのである。

そうこうしているうちに、看護学校に合格してくれたのだが、それは最近では一番嬉しいニュース
であった。まぁ、嬉しいと言うよりほっとしたってところかな。
それで、4月から故郷の広島に戻ったわけだが、そこでの最初の撮影がちょうど『素顔のままで』
の10回目となった。

タイトル通り、真の素顔を撮ることこそ、個人撮影であると思っているが、毎回それが出来ている
つもりでいたが、回を重ねるにしたがって徐々に霧が晴れるように、今まで見せてくれなかった何
かを感じさせてくれた。それをファインダーを見ていて感じていたのである。
それは、当然のことながら決してギャハハッと笑った表情とかではない。
具体的にどうこう言うのではなく、空気感なのだ。
その空気感が今回の広島での撮影では、今までにない澄み方を見せたように感じたのである。
それが『素顔のままで』を見てくれている方達に伝わるかどうかは、私には分からないが、分かる
人だけ感じてくれればいいのである。

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